「恵真、久しぶり!わあ、こんなに大きくなったんだね」

その日恵真は、こずえとまた自宅近くのカフェで会うことになっていた。

開口一番、こずえは恵真のお腹の大きさに驚く。

「うん、もう9ヶ月に入ったの。帝王切開の予定日まで1ヶ月切ったし」
「そっかー、いよいよだね。頑張ってね!」
「ありがとう!」

そして恵真は、こずえに顔を寄せて声を潜めた。

「こずえちゃんは、その後どう?伊沢くんと」
「あ、そうそう。新しく住む部屋決まったよ。ここからも近いの」
「そうなの?嬉しい!」
「うん。空港関係者って、やっぱりこの辺りで部屋探す人多いもんね。恵真とも会いやすくなるなー。楽しみ!」

笑顔のこずえに、恵真はためらいがちに尋ねる。

「ってことは、伊沢くんとは、その…」
「あー、入籍ね。11月11日にするよ」

そうなんだー!と、恵真は笑顔になる。

「うん。紙切れ1枚出してくるよー」
「こ、こずえちゃん。そんな夢のない言い方…」

恵真は苦笑いする。

「まあね。結婚って夢の世界じゃないから。ちゃんと地に足つけて二人で生きていくよ」
「こずえちゃん…。かっこいい、男前!もしかして、プロポーズもこずえちゃんから?」

思わず聞いてしまうが、こずえは首を振った。

「ううん、伊沢から。ストレートなセリフだったけどね」
「わあ、さすが伊沢くん。かっこいい!」
「そう?でも、そのあとすぐ現実的な話題になったのよ。いつ入籍するかってモメてね。伊沢の誕生日のワンワンワンの日か、私の誕生日のワンワンニャンニャンの日か。で、結局は間を取って、ワンワンワンワンの日になったの」
「そ、そうなんだ…」

恵真の頭の中に、犬と猫が駆け巡る。

「でも本当に良かったなあ。私もとっても嬉しい!これからもずっとよろしくね。こずえちゃんご夫妻」
「ふふ、こちらこそ」

二人で微笑み合う。