「恵真、お疲れ様。体調はどう?」
「大丈夫。きっと今日の楽しさは、お腹の二人にも届いたと思う」
「はは!それなら良かった」

二人でソファに並んで座り、窓からの景色を眺める。

滑走路を飛び立つ飛行機がよく見えるこの部屋は、二人がつき合うきっかけとなった日の、あのスイートルームだった。

今夜はここで1泊することにしている。

「大和さん、本当にありがとうございます」
「え?何が?」
「色々、もう全部です。結婚式を挙げるつもりがなかった私に、こんなにも素敵で幸せな一日をくれて。本当にありがとうございました」
「こちらこそ。きれいな恵真の幸せそうな笑顔が見られて、本当に嬉しかった。結婚式はしなくていい、なんて言う頑固者の恵真を説得して良かったな」

最後はニヤッと笑う大和に、恵真はぷうーっと膨れる。

「もう、みんなして私を頑固者扱いして。お父さんなんて、空飛ぶ頑固者って言うし。しかもあの場面で!」
「あはは!そうそう。お父さんのあのワードは、なかなか良かったな」

思い出したのか、大和はしばらく笑い続けた。

そして優しく恵真に微笑みかける。

「でも恵真は、パイロットとしての素質も腕もピカイチだ。頑固者くらいがちょうどいい。それにこれからは、ママになって飛ぶんだ。しかも双子ママ。もう最強だな!」
「最強って…。怪獣みたいなんですけど」
「あはは!こんな可愛い怪獣、見たことないよ」

笑いが止まらない大和は、どうやら怪獣の恵真を想像しているらしい。

「もう!この間はゴリラの私を想像して笑ってたし。大和さんったら…」

そう言う恵真も、つられて笑みがこぼれた。

「大和さんと一緒なら、毎日が楽しくて幸せ。パイロットの先輩としても、心強くて頼りがいがあって。大和さんこそ、最強のパパです」

恵真…と、大和が恵真を見つめる。

「ありがとう!二人で最強のパパママ・パイロットになろうな」
「はい!」

この人と一緒なら、私は必ず幸せになれる。

この人がいてくれるなら、私はもっと強くなれる。

この先の未来に、輝く光が射し込む気がして、恵真は思わず笑顔になる。

そんな恵真の肩を右手で抱き寄せ、左手を恵真のお腹に添えると、大和は優しく恵真にキスをした。

幸せな今日のこの日をしっかりと心に刻みながら、二人はいつまでも抱きしめ合っていた。