「はい、では撮りまーす!」

挙式のあと、スタジオで両家の集合写真を撮り、更に二人だけの写真を撮ると、今度はホテルのロビーへと場所を移した。

ゆるいカーブを描く大きな階段で、大和が恵真に手を差し伸べる様子をカメラマンがうしろから撮影する。

恵真のウェディングドレスのトレーンが、真紅の階段に大きく広がり、見ている人達の間から感嘆のため息が聞こえてきた。

「まあ、なんてきれいなんでしょう」
「映画の中の王子様とお姫様みたいね」
「美しいわねえ、見とれちゃうわ」

そんな声の中、私達もこんな結婚式したいね、というカップルの声も聞こえてきた。

カメラマンは次々と色んなポーズを要求し、二人は言われるがままに笑顔で固まる。

(えーっと、いつまで続くのかしら?)

だんだん笑顔が苦笑いになってきた頃、ようやく、お疲れ様でした!と撮影が終わった。

ふう、と恵真は小さく息をつく。

大和の手を借りて階段の下まで降りた時、ふいに大和が、恵真、あと30分時間くれる?と聞いてきた。

「え?なあに?」

恵真は首をかしげる。

「うん、ほら、せっかくきれいなドレス姿だから、もう少し写真を撮りたいんだ。体調は平気?」
「ええ、大丈夫だけど…」
「良かった。じゃあ少し移動しよう」

そう言うと、大和は恵真の腰を抱いてロビーを横切り、エントランスを出た。

「ええ?!ちょ、ちょっと大和さん?」

ホテルから出ていこうとするなんて、とスタッフを振り返ると、にこやかな笑顔で見送られる。

(何がどうなってるの?)

恵真が困惑した時、滑るように1台のリムジンが二人の前に横付けされた。

「恵真。さ、乗って」
「は、はい?」

恵真はもう、思考回路が止まったように何も考えられなくなる。

大和に促されるまま、ドレス姿でリムジンに乗り込んだ。