その日はずっとそんな調子で仕事にならず、恵真は昼前に自宅に戻る。

昼食のあと昼寝をしてから、ソファでくつろいでいると、久しぶりに彩乃から電話がかかってきた。

「恵真さん!お久しぶり。お元気?」
「お久しぶりです!彩乃さん。はい、元気にしています」
「良かったー!あのね、真一さんからさっき電話で聞いたの。恵真さん、おめでたなんですってね」

ああ…と、恵真は苦笑いする。

「もう野中さんにも伝わったんですね。すみません。野中さんと彩乃さんには、私から直接お話したかったんですけど」
「って事は、やっぱり本当なの?」
「はい。まだ4ヶ月なので、安心出来る段階ではないのですけど」
「そうなのね!実は私も今妊娠してるの」

ええー?!と恵真は大きな声を出してしまう。

「そうなんですね!おめでとうございます!」
「ふふ、ありがとう!恵真さんと一緒なんて、なんだかとっても嬉しい」
「私もです。彩乃さん、予定日は?」
「11月2日なの。もうすぐ妊娠5ヶ月に入るところよ。そろそろ恵真さん達にもお知らせしようと思ってたの」
「11月2日なんですね。私も同じ頃になるかも」

すると、え?と彩乃は戸惑った声で言う。

「恵真さんの方が少し先になるんじゃない?」
「いえ、37週で帝王切開で産むことになっているので」
「そうなの?もう決まってるのね。37週で?それって…」
「実は双子なんです」
「ええー?!双子ちゃんなのね!」

いつも落ち着いている彩乃が、珍しく興奮している。

「うわー、素敵!あ、でも恵真さんは大変よね。体調は大丈夫?」
「はい、今のところは。つわりも軽くてトラブルもなくて」
「それは良かったわ。私はもう酷いつわりで、毎日ぐったりしてたの。ようやく最近落ち着いたのよ」
「そうなんですね。彩乃さんの方が大変そうです。お大事にしてくださいね」

そのあとも、妊娠の話題で盛り上がる。

「そろそろお腹がぽっこりしてきて、マタニティーウェアを買いに行かなきゃって思ってるの」
「私もなんです。やっぱり双子だからか、少し早く大きくなるみたいで」
「それはそうでしょうね。だって赤ちゃん二人お腹にいるんだもの」
「彩乃さん、どこのお店に買いに行くんですか?」
「えっとね、大きなショッピングモールの中に、赤ちゃんとママのグッズのお店があるの。今度真一さんのオフの日に、車で連れて行ってもらおうと思って。そこなら何でも揃ってるし、店内も広いから混まないかなって」
「へえー、いいですね」

恵真はそのショッピングモールの場所を詳しく教えてもらう。

「私も大和さんに連れて行ってもらいます」
「ええ、そうね。じゃあ私が行ったあと、どんな様子だったか、またお知らせするわね」
「はい、ありがとうございます」

そしてお互い、お大事にと言って電話を切った。