マンションに帰って来ると、洗濯機を回してからソファでひと息つく。

「あー、楽しかった!」

恵真はホノルルでのデートを思い出して笑顔になる。

「お仕事だったのに、なんだかハネムーンに行かせてもらったみたいで恐縮しちゃう」
「はは!いいじゃない。ちゃんと仕事したんだしさ」
「そうですけど…。今日の部長のお話も有り難かったし。そうそう!スケジューラーの方もね、出来るだけ私達のお休みが合うようにするわねって言ってくださって。お気遣いなくって断ったんだけど。佐野さんも相談しやすそうな方だったし、なんだか心強いなあ。うちの会社、いい会社ですよね」

ふふっと笑う恵真に、大和も微笑む。

「そうだな。でも恵真?何かあったらまずは1番に俺に相談するんだよ?」

はーい!と恵真は、子どものように明るく返事をする。

どうやらまだホノルルの楽しい余韻に浸っているらしい。

お土産を広げて満面の笑みを浮かべる恵真を、大和はうしろから抱きすくめた。

「ひゃ!ど、どうしたの?大和さん」
「恵真。忘れてないよね?」
「え?何を?」

恵真はうしろを振り返り、キョトンとしながら大和を見上げる。

「あー!さては忘れたな?」
「わ、忘れてないです!…って、何を?」
「それを忘れたって言うの!もう、こんなに俺が楽しみにしてるのに!」

ん?と首をかしげて考えてから、あ!と恵真は思い出したような顔になる。

「忘れてませんって!お休みの日に、下見に行くんですよね?式場の」

大和は、じとーっと恵真に疑いの目を向ける。

「恵真。ほんとは忘れてて、今思い出したんだろ?」
「い、いえいえ、そんな。ほんの一瞬忘れただけですって!」
「どうだか。大体さ、女の子って普通は結婚式に憧れるものじゃないの?なのに恵真ときたら、ドレスにも興味なさそうだし」
「それはまあ、私って女子力ないですから…。でも大和さんのタキシード姿はとっても楽しみ!」

そう言って微笑む恵真に「ま、いいか」と大和もつられて笑う。

「じゃあ早速、明後日行こうか!」
「ええ?!明後日?」
「そう。明日はゆっくり身体休ませてさ。明後日、張り切って行くぞー!」
「え…、下見ってそんなにすぐ行けるものですか?予約は?」
「明日予約取って、明後日下見に行くぞー!」

張り切る大和に負けて、恵真も小さく「おおー」と拳を挙げた。