すると、その人の前から一人の女の人が走ってきて。
「ねぇ識(しき)〜っ!今日暇ぁ?」
「あー、今日呼び出されてて。ごめんね」
「え〜っ!そっかぁ……じゃあまた今度!」
ベッタリと男の人にくっついた女の人は、上目遣いを使いながら話しかけていて。
……彼女かな?
話が済んだら、女の人は先に走って戻っていった。
一人残された男の人は、一度歩みを止めて立ち止まって。
ふと、こっちを振り返った。
……っ!
目が合いそうになって、反射的に目を逸らす。
危ない……。
ドッドッ、と心臓の音が大きくなる。
怖い……見てたのバレたかな?
背中に冷や汗をかきながらその場で待っていると、男の人はすぐに前を向いて歩いていってしまった。
「…?どうしたの雪音」
「…っえ?…あ、なんでもないよ」
「そっか、ならいいけど。そろそろSHR始まっちゃうから戻ろっか」
「…そうだね」

