「…場所移そうか?」
識くんの表情が切なくて、思わずそう言ってしまう。
そのまま私が歩き出すと、識くんが私に着いてくる足音が聞こえた。
人が来ないような裏庭のベンチに座る。
「……識くん」
「…うん」
「無理してるでしょ」
「……」
私の隣に座った識くんに話しかける。
いつもの識くんとは全く違う雰囲気に、そう聞くと識くんは黙り込んだ。
「……周りの人に明るく振る舞うの疲れるよね。今は取り繕わなくていいよ」
「……雪音は優しいね」
「……そうかな。私は識くんの方が優しいと思うよ」
そう言って私は明るく笑う。
そんな私を見て力が抜けたように笑った識くんに少し安心した。
「……あの時、思い出したくないことを思い出した」
「……」
「辛くて忘れたいのに、忘れられない過去」

