だからといって、何も知らない私が踏み込んで言えることじゃないけど。

そう笑うと、識くんは少し呆然と私を見つめたあと。


「…っ、わ」


私に近づいて身体を引き寄せられた。

え、な、な、急だよ……っ!!

識くんの香りがフワッと漂ってドキドキと心音が加速する。

私の首に顔を埋めている識くんの息がかかってくすぐったい。


「……あー……ほんとにさぁ……」

「っ、ひぇ……っ、くすぐった……っ」


その上私の首元で話してくるんだから。
余計くすぐったいに決まってる。

髪の毛を高く縛っているから、首元が丸見えなわけで。
変に意識してしまって心臓がうるさい。


「……春哉には渡さないからね」

「っ、え?わ、渡すって……っ?」

「こっちの話」


識くんの言葉に疑問を抱き聞き返すと、笑って話を逸らされてしまった。

……って!!なんで私、抱きしめられているわけ……っ!!