識くんと繋がれた手から、熱く脈打っている。
心臓の音がバクバクと聞こえて身体が熱い。

私の手を引く識くんは、人がいない裏庭で立ち止まった。


「……はぁぁ」

「…し、識くん……?」


すると、急に大きなため息をつきながら私の方を向いてきた識くんに困惑してしまう。

な、なんでそんな大きなため息……っ?


「……が……たのに」

「……え?」

「……俺が一番に雪音を連れていきたかったのに」

「っ、え、え?」


ボソリと何かを呟いた識くんに聞き返すと。
少し拗ねたようにもう一度繰り返した。

一番に連れていきたかったって……もしかして、春哉くんよりもってこと?


「春哉にだけは負けたくなかったのに、後ろで女の子が転ぶんだもん」

「え、あの……」

「春哉よりも先に雪音を攫いたかったのに、転んでるところ見ちゃったら見て見ぬふりできなくって」

「ちょ、識くん……っ」

「女子達から褒めてもらっても、雪音を一番に攫えなかったら意味ない」