ロマンスにあけくれる




「……僕が交換したいって言ってるんだけど」

「あ、うん。それは、そう、なんだけど……」



都裄くんが開いているのは、わたしでも持っているメッセージアプリ。


けれど、今まで連絡先を聞かれたことも、もちろん聞いたこともなかったから、新鮮すぎて、変なことを聞いてしまった。



「……聞いて後悔とかしない?」

「なに。花穂さんの連絡先聞いたら呪われでもするの」

「…………かも」

「……あのさ。教えたくないならそう言ってくれていいんだけど」



面倒くさく渋るわたしに、呆れた視線を向けてくる都裄くん。


そんな言葉に、慌ててポケットからスマホを取り出した。



「そ、そんなことは、ない、です。……はず」

「花穂さんのスマホ、真面目に呪われてるの……?」



わたしの変な言い方に、怪訝そうに首を傾げながらも、QRコードを読み取る手は止めない。


やがて、ぴこんと画面に増えるひとつのアイコン。


それは、初めて都裄くんと会話をした日のロック画面に映っていた、あの白猫のアイコンだった。