ロマンスにあけくれる




「─────、……花穂さん!」

「……むぇ?」



突然わたしの名前を呼ぶ声が聞こえたのにびっくりして、咀嚼していたパンを丸呑みにしてしまった。


けほっ、と、喉に詰まってしまったパンを飲み下そうと、どんどん胸をたたいていたら。



「ちょ、花穂さん大丈夫?」

「……っ」



東屋に走り込んできたのは、眉を下げた都裄くんだった。


顔を覗き込んできた都裄くんに、必死でこくこく頷いていると。



「あ、ちょっと待って。……、これ、まだ開けてないからあげる」



はい、と小さいスポドリのペットボトルを手渡されて、反射でごくごく飲んでしまった。



「……ぷはっ、」

「ごめん、大丈夫?」

「あ、や、わたしが勝手に驚いただけだから……。それより、わたしの方こそごめんね。飲んじゃって……。わたし、ちょっと新しいの買ってくる、」

「いいって。そもそも僕のじゃないし」