ロマンスにあけくれる


𓆩⋆𓆪‬



もそもそ、口を動かしていた。



「……雨、強くなってきたなあ」



基本、わたしは誰かと一緒に食べるのが得意ではない。

自分が目を惹く容姿をしているのは自覚していて、それによって注目を集めること、そして周囲の声を窄めてしまうこともわかっていたから。


……なんてことをちゃんと理解していたのもあって、同様の理由で、入学当初から食堂を使ったことは一度もなく。


今も昼休憩に、2年間わたし以外の誰にも使われていない中庭にある東屋でひとりもそもそパンを食べている。


東屋って、中庭の中央に配置されてるから、雨の日は一度濡れなきゃ出入りできないのが難点だよなあ。

いちばん近い渡り廊下まで、距離は短いとしても。



「…………、」



さあああ、と。ひたすらに雨の音しか響かない世界が続いていた時。


ぱしゃ、ぱしゃ、と。背後で雨を弾く音が聞こえた。