そんな返事……というより、間の抜けた声が聞こえてきたのは、教室の前のドアから。

ゆっくりと首を回すと、そこにはやはり人が立っていた。高校の制服を着用し、天パがひどい肩まで伸びた色素の薄い髪に、浅葱色と白色が混ざり損ねたような不思議な瞳を持ったその人には、見覚えがある。



「えー……っと、都裄(つゆき)くん、であってる、よね?確か」

「……僕の名前、知ってたんですね」



そう言いながら、わたしへと目を向けることはせず、自分の机へと一直線に向かっていく。さっき叫んだ内容は完スルーするおつもりらしい。

面倒そうだからなのか、はたまた親切にも聞いていなかったフリでもしてくれていのか。


……ただ、彼の噂から鑑みるに、あまり後者の確率は高くないように思う。



「クラスメイトの名字くらいは覚えてるよ。それに……都裄くんのこと、密かに注目してたから」

「……注目?」



がさごそと、自分の机を漁っていた彼の手が、ふと止まった。