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「ゆーだい、はとこさんの彼女、学校どこ?」

「へ? なんでそんなこと訊くの?」

登校してみんなと適当に時間を過ごしていると、クラスメイトの一人にそう問われた。

斎月騒ぎはもう収まったと思っていたんだけど……。

「いや、なんか別の学校の友達から聞かれて。彼氏いるみたいって言ったんだけど、そんな美形なら一度見に行きたいって言われて……」

「駄目、絶対、危険」

そいつの眼前に飛んで行って、腕でバツ印を作った。

「え。危険?」

「あいつは取り扱い注意レベルの危険な奴だから、絶対見に行っちゃだめ」

「どういう人だよ」

「あえて言うなら……特級で呪われた存在?」

「こわっ。テリトリー展開しちゃうじゃん。え、人間だよね? 霊感あるとか?」

「霊感を超えたものを持っていて、同じくらいにやべえもんを持っていないとそばにいられないような奴だ。だから、俺が教えてくれなかったつって諦めてもらって」

「ええー……怖すぎてむしろ気になる」

「夏のホラー番組みたいになっとる」

別のひとりが言うと、軽く笑いが起こった。

「なんか怖くなったから諦めるように言うわ」

「そうして。それが見に行きたいって言った人のためだから」

ますますどんな人だったんだよ……と言いながら携帯電話を操作しはじめた。メッセージでも送るようだ。

……よかったー! そこで退いてくれてよかったー!

背中から汗がぶわりと噴き出したのがわかった。

よりによって斎月を見に行きたいだなんて……自分からマグマの噴き出す火山口に飛び込むようなものだぞ? 命かけろよ? ってレベルの人間だぞ? あいつは。

とにもかくにも、もっと注意しなくちゃいけないと気を引き締めた。

始業の時間が近づいて、みんな自分の席に戻る。

ちょうどその頃霞湖ちゃんが登校してきて、俺の隣に座った。