「……」

だから、なんでいつも言い直すの?

なんだか疲れてきて、ツッコまずにまた話し始める先輩を眺めていたら、ずっと静かだったしずちゃんがぽつりとつぶやく。「ホントにもう……仕方ないな」と。

やっと助けてくれる。そう思って、ホッとした笑顔をしずちゃんに向けた。

そのとき……。

「果歩ちゃん!!」

突然、ユノの声も聞こえてきたの。

“えっ”と驚いて校舎のほうを見ると、

「はぁ……はぁ……」

彼は外壁に手をついて、激しく肩で息をしていた。

睨むような目つきで先輩を見つめ、呼吸を整えている。

「ユノ……」

思わずそうつぶやいたとき、遠くからタッタッタッと走ってくる足音も聞こえてきて……。

「いた! 湯前くーん、どうしたの? 急に走り出したから、ピカルンびっくりしちゃったよ?」

ツインテールの女まで校舎から出てきた。

けれど、彼女が声をかけてもユノの表情は和らぐこともなく、その目はまだ先輩に向いたまま。

“簡単に触らないでもらえますか?”

“キミか”