頭の中に浮かぶのは小学校の卒業式。

その“女の子”というのは、きっとわたしのことだろう。

「そのときからずっと考えてました。帰ったらできるだけそばにいよう、って……。離れている間は手紙で近況を聞いてたけど、頭の中で想像するんじゃなく……この目で彼女の日常を見ていたかったんです」

初めて聞く、離れていた頃の気持ち。でもそれは、わたしの気持ちでもあった。

逢えなかった3年間、エアメールが届くたびに思っていた。“この空のハガキを選んでいる姿、この目で見てみたい”と。
同じように思っていたことに感動して、目頭も熱くなる。

「だから、部活は……」

ユノは理由を話して断ろうとしている。

帰宅部でいたのは、わたしとの空白の時間を埋めるためだったなんて……。

「そんなの関係ないっ」

……え?

空気を読まないツインテールの言葉にギョッとして、思わず振り向いた。

彼女はキリッとした顔で、胸ポケットからペンを抜きだす。

「ピカルンピカルン!」

クルクルクル~と振り回した後、ペンの頭部分にある星型の飾りに軽くキス。

そして、

「そんな女の子のことなんか忘れますよ~にっ!」

にっこり微笑んで、その飾りをユノの唇にもピタッと当てた。

「っ!?」

驚いて、席を立ってしまう。

「か、果歩……」

このツインテール……。

「お、おい……山咲!」

間接キスじゃん、今のは!!

「……や、でも……ピカルン先輩……」

っ!?

洗脳されて“ピカルン”と呼び始めたユノに、あ然。

言葉に詰まったのか、彼は何も言わず、頭をポリポリかく。

のんきな後ろ姿にイライラした。怒りもどんどん込み上げてきて……。