「言いたいことある?」
「……ないよ」
カバンの底に眠ったフロランタン。
渡せないまま今年のバレンタインは終わっちゃうのかな。
……はじめての彼氏なのにな。
「うそつき」
「ついてるように見える?」
「むしろ、ついてるようにしか見えない」
わたしのこと、なんでもお見通しだね。
少しだけ、手を握る力がつよくなった。
「……嫉妬した?」
「えっ」
急に、今日のわたしの様子を言い当てられて、思わず声を上げてしまった。
目と目が合うと、聖里くんは図星か、と言わんばかりに意地悪に口角をあげる。
「俺が女子に囲まれてたの、気にくわなかったか」
「……わかってるくせに」
「うん、だってなぎさ俺のこと大好きじゃん」
そうだけども……。
わたしが想像以上に聖里くんのことを好きだというのは、ここ三か月で十分に知られてしまった。
それからというもの、たまに『なぎさは俺のこと大好きだもんね』と意味の分からないいじりをされることになったのだけど。



