広大な土地を持った南米の国、ブラジル。日本からは首都サンパウロまで大体二十時間ほど。長い空の旅を終えて、私、森田若葉(もりたわかば)はブラジルの地へと足を踏み入れた。

「おっ、来た来た!若葉、ブラジルへようこそ!」

従兄弟の航(こう)兄がポルトガル語で「ようこそ!」と書かれた看板を片手に持ち、私に笑顔を向ける。めちゃくちゃ目立ってて恥ずかしい!

「ちょっと、航兄やめてよ!めちゃくちゃジロジロ見られてんだけど!」

「いや、ごめんって。日本人に会うの久しぶりだからさ〜」

航兄は日本からブラジルに単身赴任中。私は大学が春休みを迎えたので、航兄に招待されてブラジルに遊びに来たんだ。

「大学楽しいか?もう三年生か」

「うん、楽しいよ。テニスサークルの大会でこの前決勝まで行ったんだ!」

航兄と話しながら空港を出る。空港を一歩出た瞬間にムワリと湿った風が頰を撫でた。日本の空気ももちろん湿っているけど、赤道直下の国は日本より湿っているような気がする。