まあ、とりあえず今日の仕事を終わらせて翼との待ち合わせの場所に行く。

「あっ!羽奈先輩!来てくれてありがとうございます」
「待たせてごめんね。でも、私が行かなかったら鬼電してくるのはどこの誰かな?」
「エッ、アッ、エット・・・」
「ふふっ」

 そう、一昨日のス●ッチャに行く約束が面倒でメールをしていかないでおこうと思ったら、100件近くの電話がかかってきたのだ。さすがに自分の身の危険を感じたので行く羽目になったのだが、正直今日も帰りたかった。でも、でも、でも!あの100件近い電話はトラウマ級だ。仕方がないのでは?
 と、誰にかわからない言い訳を永遠に繰り返すうちに彼は動き始める。

「じゃ、行きましょう‼」

 本当にしっぽを振っている子犬みたいでかわいいし、面白い。控えめに言っても最高だ。実は誰にも言っていないが、子犬系男子は本当に愛でる対象で大好きなのだ。それが恋愛対象かはまた別の話。
 そして彼はそういうなり、ご機嫌な様子で私の手を引いて駅に向かった。
 道中の会話なんてものはない。私があまり話さないから。でも、彼の手は離れまいと必死に私の手を握っている。さすがに心打たれた私は、少し、普段より力を込めて握った。

 そしたらなぜだか胸が痛くなった。