初めて心から『好き』だと思える男性(ひと)

クールでカッコよくて、大人の色気が溢れ出していて。
青春時代の一ページに、登場人物として刻まれた人だと思っていたのに、今では私の人生にはなくてはならない王子様(存在)

童話の『シンデレラ』に出てくるような『ガラスの靴』を手にして、プロポーズしてくれた言葉は一生忘れない。

こんなにもロマンチストな彼。
世界中探しても見つからないと思う。

プロポーズと言えば、指輪を差し出して言うイメージが強いが、彼は指輪を後回しにした。
金額ベースで考えたら、たぶんガラスの靴の方が安いと思うけれど。
求婚のイメージにはピッタリだと思う。

しかも、いつどうやって調べたんだろう?
私の足に合わせて作ったみたいにぴったりフィットした。

『新居』だなんて言ったけど、わざわざ新築マンションの名義まで変えて用意するだなんて。
理解し難い彼の思考に、既について行けそうにない。

この先、何度となく驚くことが待っているのかもしれない。
けれど彼となら、時間をかけてでも共に乗り越えたい。


ずっと『先生』としか呼べなかったのに。
今はもう、『先生』と呼びたくない。

教え子の中で、唯一私に許された名前呼び。
この先、毎日のように呼ぶと思うけれど。
声にする度に幸せを噛みしめれるはず。

『白杜さん』と呼べることに。


当時毎日目で追い続けた想いが、十年以上の時間をかけてゆっくりと彩られた。
それも、色鮮やかな色調ではなく。
『矢吹 白杜』という、たった一色の濃淡で描かれた初恋だから。

これから新たに描かれる画は、三色……四色になるかもしれない。
体に芽生えた幸せの予感を感じて―――。

~FIN~