プロポーズ?
しかも、渡瀬から……?

聞いてない。
いや、話せないのかもしれないけれど。

祥平が言ってた言葉がリアルタイムすぎて怖い。
渡瀬からのメッセージがどうのこうのというよりも、二人の間でそういう雰囲気になった事実があるということが怖い。

俺よりずっと同じ時間を過ごして来た一番近しい男だからか。
電話でもメールでも、下の名前を呼び捨てにし合う仲だからなのか。
途端に不安に駆られる。

元彼でもなければ、彼女の中に恋愛感情はないと聞いていたからか。
どこかノーマークだった気がする。

結婚適齢期の女性で、美人だしスタイルもいいし、性格もいい。
昔からモテていたし、花形の職業に就いていて合コンもたくさんしていても不思議じゃない。

だけど、どこかで安心していたんだ。
彼女から『結婚』を感じさせるような要素が微塵もなかったから。

けれど、男の方は違うよな。
あんなにいい女がフリーでいれば、付き合いたいし嫁にしたいと考えてもおかしくない。

今さら焦っても遅いのに。
自分より先にプロポーズした男がいるというだけで、イライラする。

『断った』という事実はありがたい。
俺と付き合う前の話かもしれないけれど、実際今付き合ってるのは自分なわけで。

物凄く焦るし苛つくのに、それ以上に自分の情けなさに腹立たしい。
七歳も下の男に先を越されたという事実に打ちのめされる。

「落ち着け……落ち着くんだ」

自分自身に必死に言い聞かせる。
プロポーズを受けたわけじゃないんだから、俺は俺で自分でできることをするだけだ。