「では、失礼します」
ヴァイスさんがしゃがんであたしの足元にひざまづくと、靴を脱がすために指で触れてくる。
触られた瞬間、なぜかビクッと足が跳ねた。
(お、落ち着いて……なんてことない……ただ、靴ずれを治療するだけなんだから)
そう言い聞かせているのに、鼓動が勝手に速くなる。
指で微かに触れただけなのに、そのぬくもりが肌に残っているようで…。次第に顔に熱が集まっていく。
静かな緊張感を孕んだ空気のせいか、握りしめた手のひらのなかに汗を感じる。
ひんやりした軟膏を傷薬に塗られ、包帯で巻かれる。たったそれだけの作業。たぶん数分間の出来事だけど、あたしには30分より長く感じた。
「……はい、これでどうでしょうか?」
いつの間にかサンダルまで履かされ、ヴァイスさんが顔をあげて訊ねてきた。
「だいぶ痛みは和らいだと思いますが」
成果を期待した顔に、思わず頬がゆるむ。念のため足を動かしてみると、びっくりするくらい痛みが引いていた。
「もう、大丈夫。痛みはほとんどなくなりました」
「それは、よかったです」
ヴァイスさんがホッとした顔をして、ようやく席に着いた。
「おや……ババロアは召し上がられなかったのですか?お口に合わなかったでしょうか?」



