龍騎士殿下の恋人役〜その甘さ、本当に必要ですか?


さらに1時間後。ようやく開放されてほっとすると、ヴァイスさんが自ら迎えに来た。

(うわあ……恥ずかしい。サルが気取ってオシャレしてるみたい)

シフォン地の薄黄色のワンピースに白い靴と帽子。短い髪の毛は少し編み込みして、鳥の髪留めで留めてある。絶対似合わない自信はあるけど、いちいち口にして自虐しても仕方ない。

「アリシア、あなたによく似合っていますね」

にっこり笑ってヴァイスさんが歯の浮くような台詞をおっしゃる。

「健康的で活発なあなたには、太陽の光に映える黄色がよく似合います。とても可愛らしいですよ」

お世辞なんだろうけれども、いちいち心臓に悪い仕草をしてくる。

「髪の毛も可愛らしいですね……あなたに似合う」

そう言って、ヴァイスさんあたしの留めた髪の毛に指先で触れてくる。ドキン、といちいち高鳴る心臓に、静まれと内心言い続けた。

「あ、ありがとうございます……ヴァイスさんもカッコいいです」

あたしの言葉はお世辞じゃなくて、本当にそうだった。
ヴァイスさんはパリッとした水色のシャツに、体にフィットした青のウエストコート。ライン入りの黒いスラックスにブーツ。胸もとの白いクラバットもカッコいい。

「ありがとう」
「で、でも……ヴァイスさん、背中の傷は大丈夫なんですか?本当は入院しているはずですよね?」

あたしはどうしても気になる事があってヴァイスさんに訊ねると、彼はにっこり笑って「大丈夫です」と返してきた。

「これくらいの傷は竜騎士にとって日常茶飯事ですから」

それに、と彼は不思議なことを言う。

「あなたを悲しませたくはないので、なるべく急いで治しますから」