「ずるいわ、メグ。わたしもアリシア様とお話ししたいのよ!」
3人の中で一番背が高い女の子がずいっとメグさんを押しのけてあたしの前に出る。
「さ、アリシア様。このわたしベスがお部屋へご案内しますわ」
薄茶色の髪をきっちり結い上げて少しきつそうな顔立ちだけど、朗らかな雰囲気のベスさんが案内しようとすると、もう一人いたエリィと呼ばれた女の子がひょいと2人の間から顔を出す。
「ちょっと、早くしないと次の仕事が待っているのよ。お喋りごっこしてる暇はないわ」
ブルネットの髪をお洒落に編み込み、制服も少しアレンジしてる可愛らしい顔の彼女は、あたしを見てフン!と鼻息を吐く。
「なによ、ヴァイス殿下の恋人というからどんな美人かと思えば…大したことないじゃない」
「エリィ!」
メグさんがすぐに注意をしてくれたけど、エリィさんの棘は収まらない。
「なによ、あたしはみんなの胸のうちを代弁したに過ぎないわ。だって、ヴァイス殿下の妻になる方は幼なじみのメローネ様以外、あり得ないってみんな思っていたくせに」
(メローネ様……!?)
意外な名前がここで出てきて、反射的にエリィさんの顔を見てしまった。
「メローネ様……ヴァイスさんの幼なじみだったんですか?でも、王家の名前……」
「呆れた。ヴァイス殿下の恋人なのに、こんな程度のことも知らないの?」
エリィさんに呆れた顔をされたけど、メグさんがフォローをしてくれた。
「メローネ様は、王太子殿下とヴァイス殿下の幼なじみでいらっしゃいました。特にヴァイス殿下と仲睦まじくて…誰もが2人が結婚すると考えてましたが、結局メローネ様は王太子殿下とご結婚され、王太子妃となられたのですよ」



