「なら、あなたもここに寝るべきではありませんよね?」
「え?」

ヴァイスさんはまた、わけがわからないことを言い出す。

「あなたは竜騎士候補生で、私の恋人です。ならば、馬小屋で眠るべきではありませんね」
「そ、それは……屁理屈でしょう」

あたしが反論しようとすると、先ほどの穏やかな顔から一転。ヴァイスさんは目を伏せて頭を下げてきた。

「聴きましたよ。一部の候補生から受けている嫌がらせを。気付くのが遅れてしまい、申し訳ございませんでした」
「そ、そんな…!ヴァイスさんはずっと遠征で不在でしたし、これはあたしが自分で解決すべき問題ですから」

両手をバタバタと振って彼は悪くない、と重ねて言った。

「悪いのは、意地悪をする人たちです。大丈夫、あたしは多少やられたって平気ですし、逆にやりかえしてやりますから!」

ムキッと腕に力こぶを作ってみせれば、ヴァイスさんはフッと口元をほころばせる。

「……そうですね。本当にあなたは強いひとです」
「でしょう?」
「ですが、そんなあなたにもどうしようも無い時はあるでしょう。私は、そんな時あなたに頼って欲しいのです」
「……ヴァイスさん…」

真剣な瞳で見つめられて顔が熱くなり、思わずうつむいてしまう。

「訊けば、宿舎は満室だそうですね…なので、私の家でければお越しください。あなたが眠るくらいの部屋はありますから」