「あ、あの……よかったら、これ」
腰に下げた革のカバンから布の袋を取り出し、差し出した。
「ショートブレッドです。はちみつを入れてあるので子どもでも食べやすいかと」
携帯用の非常食として持っていたショートブレッドだけど、キルシェちゃんが可愛すぎてついついお菓子をあげたくなってしまいまして。手持ちでお菓子と呼べるものはなく、似たようなものだけどこれを差し上げることにした。
(いきなり差し上げると失礼かな?)
袋を持ったままドキドキと反応を待っていると、そっとそれの上に手が添えられた。
滑らかで、傷やシミひとつない白く細い指。
「ありがとうございます、アリシアさん。キルシェのおやつにさせていただきますわね」
にっこり笑ったメローネさんにそうおっしゃっていただけて、ほっと息を吐いた。
「は、はい!そんなに固くないので子どもでも食べやすいと思います」
「わぁ!おかしだ。おねえちゃん、ありがとう」
ぱあっとキルシェちゃんが笑顔になって、あまりの眩しさにこちらまで気持ちが明るくなる。
「いえ。もし、そんなもので良ければまた作りますので、いつでもおっしゃってくださいね」
「ありがとう。キルシェが気に入ったらまた」
「はい!」
「では、そろそろ見つかりそうですからこれで失礼いたしますわね」
バイバイ、とキルシェちゃんが手を振ったから、あたしも手を振り返しておいた。



