(ヴァイスさん、大丈夫かな?)
医務室には来なくていい、とヴァイスさんには言われたけど……どう考えても彼の怪我はあたしの責任だし、様子を見に行かないと落ち着かない。
石造りの竜騎士団専用の病院は小規模ながら施設や入院設備が充実していて、千人いる竜騎士の治療を一手に担う。たしか、彼は今日はここに泊まるはず。
よく磨き込まれた御影石の床をドキドキしながら歩いてゆく。全体的に白い石で作られて時折植物が植わっているから、清潔感があり空気が気持ちいい。
たまにすれ違う白衣を着た関係者には足を止め会釈をしておくついでに、ヴァイスさんのことを訊いておく。皆、あたしの胸もとにあるブローチを見ると納得したような顔であっさり教えてくれた。
(A号室……あちらかな)
ようやくヴァイスさんがいるらしい部屋が見えてきて、逸る気持ちで足を速めたけど。
目的の部屋のドアが開いて、誰かが出てきた。
先に見えたのが白銀色の髪の毛だったから、ヴァイスさんかと足を踏み出しかけたけれども。
ドアが閉じてその髪の持ち主が、幼い子どもだったということに驚いた。
年の頃はまだ3歳くらい。その顔を見た瞬間、ドキンと心臓が嫌な音を立てた。
白銀色のサラサラな髪。そして、淡い水色の瞳。白い肌。ヴァイスさんと同じ色を持つ女の子は、顔が幼い頃の彼を思わせるような端正な目鼻立ちだった。



