「アリスさんからは“ビシバシ鍛えてやってくれ”と頼まれているが、私が手ほどきする必要もないくらい高いレベルで驚いたよ」
一流の竜騎士だったバルド卿からそんな事を言われては、驚くしかない。
「え、そうですか?あたし…別に特別なことはなにもしてませんけど…」
「他の候補生は皆、まだ翼のないヤークの騎乗にすら戸惑っていた。対する君は飛翔するファイアドラゴンをすでに乗りこなし、一心同体とも言える活躍をした。この差はかなり大きいのだが」
バルド卿の言ってる意味がわからない。あたしにすれば、ドラゴンに乗ることは生活の一部。食べたり眠ったり歩いたりすることと同じくらい当たり前の事だから、なにが特別なのかさっぱり理解できなかった。
「うーん…やっぱりわかりません。ですが、みんなが困っていたら助けていきたいと思っています」
今日ザラードに教えたように、級友たちが躓いているなら手助けしたい、と思う。たとえハワードやリリアナさんでも。せっかくできた級友なんだから。
「それは頼もしいな。だが、君も困ったことがあれば、遠慮なく私に頼りなさい」
大きな手でぽんぽんと頭を叩かれて、思い出した。
幼いころ、山のように大きな男の人に頭を撫でられたことを。
「はい」
なんだか懐かしくて、胸がぽかぽかと暖かくなった。



