あたしの話を聴いたバルド卿は、なぜだか朗らかに笑う。
「さすがアリスさん、幼子にも容赦無いな」
「え、おばあさまをご存知なんですか?」
「それはもう。アリスさんは“疾風の女王アリス”の二つ名で知られた、伝説の龍騎士だよ。私たち竜騎士の憧れだったんだ」
「ええっ…おばあさまが龍騎士!?」
意外も意外……そりゃあ、おばあさまが竜騎士だったということは聴いたことがあるけど。まさか、竜騎士中の竜騎士である龍騎士だったなんて。
「じゃあ、卿はおばあさまとお知り合いなのですか?」
「ああ、君の故郷にも何度かね。まあ、幼すぎる頃だったから、君が憶えていないのも無理はないが……」
バルド卿のおっしゃる通りに、正直彼が訪問してきた時の記憶はなかった。何度もあんな辺境の地に訪れているなら、おばあさまとは昵懇と言ってもいい仲だと思うのだけど。
だいたい、あたしはあまりおばあさまの過去を知らない。おばあさま自身が昔ばなしは辛気臭くて嫌だ、と話したがらないんだから。
別に、あたしはおばあさまがどんな人でも構わなかった。あたしを今日まで育ててくれたくれたことに変わりはない。
たとえ、“本当の縁”が薄くても。



