「ち、行こうぜ!」
舌打ちしたハワードは、起き上がった筋肉隆々くんとふくよかくんを引き連れ、訓練場から出ていった。
どこまでもガラが悪い…あれで本当に伯爵家令息なのかな?授業もよくサボってるみたいだし。
(その時はありがたくあたしが席を使わせてもらうけどね)
「ザラード、リリアナさん。ハワードから庇ってくれてありがとう。助かったよ」
あたしがお礼を言うと、ザラードは頭を搔いて「いや」と照れくさそうにした。
「ハワードの言葉は目にあまるし、それにぼくも大したことできてないから」
「それでも、あのお坊ちゃまになにか言うには、勇気がなきゃできないよ。ありがとう」
「……わたくしも、オズボーンさんが貴族に相応しくない振る舞いをしたので、当然の注意をしたまでですわ。別にあなたを助けるためではございませんの。うぬぼれないでくださいませ」
ムチを顔に当てて斜め上からあたしを見下ろし、リリアナさんはそうおっしゃる。素直に認めたがらないのは仕方ない。だから、もう一度重ねてお礼を言っておいた。
「うん、それでもあたしは助かったよ。ありがとう、リリアナさん」
「………ふんっ!」
ぷいっとそっぽを向いたリリアナさんの耳は、ほんの少しだけ赤かった。



