「はん!あんなへなちょこ竜で満足するなんざ、さすが田舎娘だな!」
また、ハワードがちょっかいを出してきた。
さっき教官に叱られたストレスを発散しようとしているんだろう。
「ハワード、やめろよ!」
すぐそばにいたザラードが注意をしてくれたけど、ハワードがそんなくらいでやめるわけない。
あたしもいつもなら無視するけど、大切な家族が侮辱されて黙っていられなかった。
「……なにがへなちょこ竜よ。バーミリオンのことをよく知らないくせに、変なことを言わないで」
「は!体も小さい、ろくなブレスも吐けない、強くもない。オマケにバカ丸出しな間抜け面。これでドラゴンって、笑わせに来てるのか?ハハハ!」
お腹を抱えて笑うハワードに、ついつい頭にきてしまった。腰に手を当てて、ズイッとやつに顔を近づけると思いっきり睨みつけた。
「……よくも、言ったわね!?あたしに難癖をつけたいなら、あたしにいくらでも言っていい。だけど、バーミリオンに対して失礼なことを言うのは許せない!」
「な、なんだよ!?近づくな!おい、プーロ!」
ハワードが叫べば、筋肉隆々の取り巻きが一人あたしの肩を掴む。がっちり掴まれた肩は悲鳴を上げそうだけど…。
あたしは逆にプーロの腕を掴むと、それを軸にして彼の身体を浮かせた。
「わ、わ……わああっ!」
ズドン、といい音がしてプーロを地面に叩きつけたあたしを見たハワードは、信じられないのか目を剥いていた。
「おばあさま直伝の一本背負い投げ。ハワード、あなたも味わってみる?」
白目をむいたプーロを前に、にっこりとハワードに笑ってみせた。



