「そのような人間至上の傲慢な考えを捨てろ!竜騎士にとってドラゴンは大切な仲間であり、パートナーだ。対等な立場で尊重すべき存在。でなければ、事実上の卒業試験である“臥龍(がりゅう)の儀”では、相棒となるドラゴンは見つからないぞ?」
 
「……はぁい」

バルド卿の叱責に、ハワードは渋々といった様子で返事だけはした。たぶん、あの様子だと卒業に必要なパートナーのドラゴンは見つからないだろう。 

バルド卿の出した“臥龍の儀”とは、竜騎士養成学校の卒業試験。古(いにしえ)の森に赴き、竜騎士のパートナーとなる騎竜を自らの手で捕獲する、竜騎士候補生にとって最大のイベントだ。

ドラゴンはただ捕獲すればいいというわけでなく、意思疎通を図り騎竜となる契約を結ばねばならない。

暴力や報奨や怪しげな薬や術でむりやり従わせることは論外。真摯に対峙し、コミュニケーションを重ね、ドラゴンに認められた上で、騎竜となる同意を得てドラゴンと契約する。

その際、ドラゴンより牙か角を与えられる。騎竜だから契約者に相応しい武器や防具に変化する。
それを得たものが卒業となり、晴れて竜騎士叙任の儀式を受ける権利を得る。

ちなみに竜騎士に正式に叙任されるには、更に古の森に君臨する古代竜に認められる必要があるんだよね。

(あたしにはまだ遠いけど……頑張る!絶対、古代竜にも認めてもらえる竜騎士になるんだ)

いかに困難な道だろうと、あたしは負けない。故郷を、大切なみんなを護りたいから。