「クルルゥ」
「わぁ、孵ったんだ。かわいいー!」
「ピィ」
突き出した岩に座り、ふわふわの子ドラゴンを手のひらに載せて指先で撫でると、もふもふがたまらない。
岩場の穴を巣穴にする小型ドラゴンもいる。
子どものうちは羽毛があって、長ずるに従って抜け落ちるタイプだと、卵から孵った直後はふわふわで鳥の雛のよう。
ずっとドラゴンたちのお世話をしている楽しみのひとつが、こうして新しい生命の誕生を見られること。
ここノプット王国の東の辺境の地にあるあたしとおばあさまが暮らす大森林地帯は、先に説明したように数万年単位の太古からの自然がまるごと残された世界でも珍しい地。つまり、固有種や昔から生息する動植物が多く残っている。
他では幻獣扱いされるドラゴンを始めとした、ユニコーンやペガサスやフェアリー、ピクシー、シルフ…様々な妖精すら自然に見て触れられる。
それゆえ、欲を持つ人間には格好の密猟場……だからおばあさまが50年前から番人として、この広大な地を強力な結界で護っている。
おばあさまの結界は悪意や害意ある人間のみ選別して入れなくするもの。あと、幻獣達が外へ出ない檻の役割も持つ。貴重な種の保存のためにね。
あたしも幼い頃からおばあさまのお手伝いをしてきて、そのことは誇りに思う。けれども、最近は自分の力不足を感じて仕方ない。
この育った地を護るために、もっと確かな力がほしい…と。そう感じていた。
そして見つけたのが、竜騎士になるという夢。
竜騎士となり領地としてこの地を認められれば、たくさんの部下とともに護ることができる。
見た目が若くともおばあさまは高齢だし、いつ何があるかわからない。おばあさまほどの魔力がないあたしには、これくらいしか方法がなかった。
「ピィ」
手のひらにのるちいさく暖かな生命。あたりまえだけど触れると暖かいし、トクントクンと心臓も動いて呼吸もしてる。こんなちいさな生命を絶やさないためにも、あたしが護るんだ!



