龍騎士殿下の恋人役〜その甘さ、本当に必要ですか?


パチパチ、と拍手が起きて自然にそちらに目を向けると、びっくりした。

白いシャツにレザーアーマー。なめし革のズボンとショートブーツを履いたヴァイスさんがそこにいたから。

「アリシアの言うことは正しい。さすがですね」
「…ヴ、ヴァイス殿下!」

普段は威張るくせに権威に弱いハワードなんて、真っ青な顔で震えだした。

「い、いつから……」
「そうですね…まあ、わりと最初からでしょうか。アリシアがザラードくんに頭絡の付け方を教えてるあたりからですね」

その言葉を聴いたハワードは、さあっと青白い顔になった。……見られて困るなら、最初からしなければいいのに。

「まぁ、子ども時代はやんちゃしがちですよね?ですがハワードくん、あなたは確か16の成人でしたよね?」
「は、は……はい!」
「大人ならば、自分の行動には責任を持たねばならない……そうでしょう?殊に、竜騎士を目指すならば公平無私であらねばならない。違いますか?」
「は、はい…そのとおりです」

地面に両手と膝を着いたままのハワードの顔は、青白いを通り越して白くなってた。  

「ならば、なぜアリシアにあんなことをおっしゃるのか…理由を聴かせていただけますか?」

カツン、とやけにヴァイスさんの靴音が大きく響き、ハワードは「ひっ!」と短い悲鳴を上げた。

「少なくとも、アリシアは竜騎士になるため誰よりも努力しています。そんな彼女を軽んじる理由はなんですか?」

膝を着いてハワードを詰問するヴァイスさんの笑顔が、なぜだか少しだけ怖く見えた。