龍騎士殿下の恋人役〜その甘さ、本当に必要ですか?


ヴァイスさんは温度のない声でメローネさんを諭す。

「メローネ、勝手なことを言わないでください。アリシアは私にとり、どんな女性よりも美しい。他人の悪口を喜々として口にしたあなたより、遥かにね」
「……!」

ググッとメローネさんは悔しそうな顔をする。そして、あたしをキッと睨みつけると、突然掴みかかってきた。

「ちくしょー!この泥棒猫!あたしのヴァイスをよく奪ったなああ!!」

彼女の腕が服に伸びてきた瞬間、スッと避けた。わざわざ捕まる義理はない。

勢いあまってその場で倒れたメローネさんに、あたしは一言だけ告げた。

「メローネさん…なぜ本気で欲しかったなら、ヴァイスさんだけを愛さなかったんですか?彼なら、本気で愛したならば…たくさんの愛をくれます。素敵なひとです…でも、あなたはそれを放棄した……なら、あたしが彼をもらいます。今さら欲しかったとしても、渡すつもりはありませんから」
「ぐぐっ……小娘があぁ!!」

勢いよくメローネさんが立ち上がろうとした時、彼女の肩を後ろから掴んだ人がいた。

「メローネ、もう止めるんだ」

穏やかな声で彼女を諌めたのは、夫のアンテルム王太子殿下で。
彼の周りにいた騎士たちは、突然メローネさんをがっしりと捕らえた。