逆にこのことでブチ切れたのはあたしではなく、リリアナさんだった。
「メローネ妃殿下!貴方様は王太子妃であられるのですから、人前で不埒な行動はお慎みくださいませ」
もともとキツイい顔立ちだから、怒った時の迫力はすさまじい。彼女はただ注意をしただけなのに、リリアナさんは怯えた様子でますますヴァイスさんにしがみついた。
「助けて、ヴァイス!わたくし…意地悪を言われましたの」
「はぁ?」
思わず皆が呆れた声を出してしまうほどだった。
リリアナさんはなにも意地悪なんて言ってませんが?
まぁ…か弱い女性が怖い思いをしたから、泣きながら救いを求めるのは仕方ないですけど…。
けど、ヴァイスさんはスッとメローネさんを自分の体から引き離す。
「ヴァイス…?」
メローネさんが訝しげな声で彼を呼ぶと、ヴァイスさんは微笑んでた。微笑んでいたけど…。
そこにはあたたかみなど欠片もなく、彼女を温度のない冷たい声で突き放す。
「メローネ、いい加減になさい。あなたはいつまで愛されたがっているのですか?」
「ヴァイ…」
「その名前を、呼ばないでください。あなたは兄王太子の妻です。兄からあれだけ愛されながら、なにをそんなに愛されることを欲しがるのですか?
今のあなたは、ただのわがままな子どもです。もっとほしい、もっとよこせと。いつまで子どものつもりでいるのですか?」
普段怒らない人ほど、本気で怒った時の迫力がすさまじい。ヴァイスさんの言葉に、誰も口を挟めなかった。



