龍騎士殿下の恋人役〜その甘さ、本当に必要ですか?


「あった…あれだ!」
 
バイキングの扱う船の中でも特に頑丈で脚が速いロングシップ。それでもせいぜい1時間に進めるのは追い風でも10km程度。バーミリオンの最高速度には到底敵わない。

あたしの予想通りに、船にはメローネさんらしい姿があった。布を被っているけど、あの金髪は間違いない。
 
とはいえ、どう攻めようか…?

(まだこちらには気づかれてはないけど……無理に攻撃したら、メローネさんが危ない)

メローネさんは船首やぐらに見張りとともにいる。
おそらく攻撃したらそのまま海に落とされるだろう。
手足を縛られた状態で落とされたら…危ないどころかそのまま命を落とす危険がある。

《……なにをぐずぐずしているのだ》
「えっ!?」

今、頭に響いた“声”は……。

「まさか、イッツアーリ!?」

あたしがバーミリオンをホバリング状態で停止させていると、ほとんど音もなく羽ばたいて現れたのがバハムートのイッツアーリだった。
やっぱり…古の森で見たバハムートはイッツアーリだったんだ。

「あれ……リリアナさん!?」

イッツアーリの背中に乗っていたのは、クロップス卿ではなく娘のリリアナさんで。彼女は凛々しい顔つきであたしに告げた。

「イッツアーリがわたくしの騎竜となることを承諾していただけましたわ。わたくしも古代竜に認められ竜騎士となり、アリシアさんを助けるようにと頼まれましたの」