龍騎士殿下の恋人役〜その甘さ、本当に必要ですか?



「バーミリオン、タイミングよくお願いね!」
《おうよ!任せろ!!》

ヴァイスさんに頼んで、この場にいた竜騎士たちの部隊を20の小隊に編成をし直してもらった。他の地域でも戦いはあるから、ここにいるのは100騎あまり…1小隊に5人の竜騎士と騎竜。

ひとまずギリギリのラインだけど、やれないことはないだろう。

「ヒュウー……」

シルヴィアが咆哮すると、雲ひとつない空からキラキラと氷の粒が降り注ぐ。そしてそれはドラゴン船の底に集まり、ゆっくりゆっくり氷の柱に成長する。
その度にドラゴン船は傾斜がつき、船底ごと船が持ち上がる…つまり、転覆していくんだ。

ドラゴン船の長所は喫水線が浅いことによるスピードの速さと転舵のしやすさ。そして浅瀬での座礁のしにくさ。けれども、逆を言えば転覆しやすいという弱点にもなる。

船底には人が入れるほどの空間はない。甲板に出てる人がすべてだ。
船が転覆すれば、当然船にいた人は海に投げ出される。バイキングだけなら一気に転覆させてもよかったけれども、捕虜や人質の安全を考えてゆっくり転覆させることにした。

《よーし、一発目いくぜええ!》

転覆させつつある船は、バーミリオンのファイアブレスで燃やす。そうして完全に船から人が離れたのを確認した竜騎士たちの部隊が、バイキングと戦いつつ捕虜の救出を試みる。

海上で飛翔するドラゴンに乗った竜騎士と、海に浮かんだバイキング。いくら優秀な戦士だろうと、どちらが有利かなんて言うまでもない。
仮に泳いで上陸しても、作戦を伝えてある騎士団が待ち受けている。陸上戦のプロであり機動力に優れた彼らに、やつらが敵うわけがなかった。