「バイキングに捕らえられた人質は、メローネです」

さすがにヴァイスさんから二度も言われたら、気のせいじゃない。

バイキングの人質が…メローネさん?王太子妃の。
なるほど、それなら確かに攻撃できないのも納得だ。

でも、そんなの、おかしい。

メローネさんは王太子殿下が離宮へ静養に行かせたはずだ。バイキングが襲撃した北の町とも離れた土地に。
どうやってメローネさんがこんな場所まで来たの?それとも、バイキングがメローネさんを誘拐でもしたのか。

「一体……どうしてメローネさんがここへ?南の離宮へ静養にいったはずでは?」

あたしがそう訊ねたら、ヴァイスさんは苦悩に満ちた顔をする。なにか、今は訊ねてはいけない気がして自分から話題を変えた。

「ならば、メローネさんを助ければいいんですよね?」
「それはそうですが……メローネがいる船がわからないのです」
「……なるほど」

海岸から沖まで見えるドラゴン船は20隻あまり。
ヴァイスさんもメローネさんの解放を交渉してはいるみたいだけど、応じて貰えないらしい。

「メローネ解放の条件が無条件降伏とドラゴンすべての引き渡し、女王陛下および王太子と全貴族を廃して頭領を新たに国王に据え、部下全員に貴族の地位と領地を寄越せ…と。とても応じるわけにはいきません」

ヴァイスさんが語ったバイキングからの要求はめちゃくちゃ過ぎた。
つまるところ、国全部を寄越せと言ってるも同然。
そりゃあ、一つも応じるわけにはいかないわ。