龍騎士殿下の恋人役〜その甘さ、本当に必要ですか?



《……リシア》

「えっ?」

また、聴こえた…?

《どーした、アリシア?》

バーミリオンとともに古代竜のもとへ向かっている最中、あたしを呼ぶ声が聴こえた……気がする。

「バーミリオン、なにか聴こえなかった?心話で」
《んー言われれば確かになあ…すっげー小せえ“声”が。あんま気に留めなかったけどな》
「やっぱり…バーミリオンにも聴こえたんだ」

バーミリオンは上位種に進化したから、魔力が以前より増大してる。だから、心話をキャッチできる範囲が広がった。

「森に入ってから度々呼ばれた気がしたんだよね」
《んー…その“声”は、この先から聴こえるぜ?》

バーミリオンが示した先には、古の森で最も深い森がある。樹齢数千年とも言われる巨木群。その後ろにそびえ立つ断崖絶壁には広い滝壺があり、今も大瀑布が降り注ぐ。

《…あの先だな》

莫大な量の水が勢いよく流れ落ちる滝。
バーミリオンはその中に古代竜がいる、と言った。

「バーミリオン、大丈夫?火と水は相性良くないけど」
《なんの!オレ様に不可能はなぁーい!うりゃあ!!》

気合いを入れたバーミリオンは一気に大瀑布へ突入。《冷てえ!》と悲鳴を上げながら無事に渡りきった。