「……でもさ、バーミリオン。あたしはあんたがほしいけど、あんたの意思も尊重したかったの…あんたが違う道に行きたくなることもあるかもしれない…だから、あたしのわがままで縛りたくなかった」
あれ?とデジャヴ。あたし、ヴァイスさんと同じことをバーミリオンに言ってる。
でも、それこそ嘘偽りない本音。
「バーミリオン、あんたは育ててもらったから…って自分の未来を恩で考えなくていい。あたしが望むのはあんたの幸せ。怪我なく病気なく、ただ幸せになってほしい…ただ、それだけだよ」
あたしがそう告げると、バーミリオンはポロッと涙をこぼす。
そして……自分の角を掴むと、そのまま力を込めて折った。
《アリシア……これ持てよ》
「バーミリオン…あんた…いいの?」
《いいさ。オレ様もアリシア以外の騎竜は嫌だからな》
差し出された角は、ファイアドレイクの象徴である黒。一番立派な角だから30センチほどある。
恐る恐る受け取ると、ひんやりしてずしりと重い。
バーミリオンがあたしの騎竜となる契約の証。
「わかった……絶対、大切にするから」
角はそのままだと武器に変化しない。古代竜に会って認められ初めて変化する。
《じゃあ…竜騎士になるため、ちょっくら古代竜のおっさんに会いにいくか!》
「うん!」
久しぶりにバーミリオンの背中に乗り、そのまま火口から飛び立った。



