龍騎士殿下の恋人役〜その甘さ、本当に必要ですか?


《よお、アリシア。頑張ったじゃないか》

夕方近くになりようやく山頂まで登り切ると、バーミリオンが火口近くで待っていた。

「はぁ……はあ。さすがにキツかったよ」

大の字で寝転んだあたしの顔を、バーミリオンは覗き込んでくる。

《で?なんかオレ様のハートに響くコンセプト考えて来たか?》
「また難しい言葉覚えたね……」
《まぁな。ここにはお仲間がたくさんいたから、色々話したんだぜ?》
「そっか……」

仲間……か。
考えてみれば、もともとバーミリオンはファイアドラゴンだ。仲間がいるならその中で暮らす選択肢もあるんだよね。

「……バーミリオンはどうしたい?この3日間、仲間と一緒にいて楽しいなら、群れに帰ってもいいんだよ?あたしはバーミリオンの意思を尊重するから」
《………》

あたしが本心からそう言うと、なぜかバーミリオンは押し黙ってしまう。

「……どうしたの、バーミリオン?」

あたしが彼に触れようとすると、いきなり翼で叩かれた。

《うるせぇ!何もかもわかったような顔で、オレ様の気持ちを勝手に決めつけるな!!》
「えっ?」
《いつも、いつもそうだよな、アリシアは!オレ様にいてくれ…と言いやしない!!今だって……なんだよ、それ!?オレ様をそんなに仲間に帰したいか!そんなにオレ様がいらないのかよ!!》
「あ……」

バーミリオンに怒鳴られて初めて、自分の失言に気づいた。

確かに、あたしは……まず騎竜になってという会話より、バーミリオンが仲間と楽しそうならそこに帰る方がいいのか…と考えて発言してしまってた。