龍騎士殿下の恋人役〜その甘さ、本当に必要ですか?


2日目の朝。
まだ霧にけぶる冷たい空気のなか、ヤークとともに出発した。

火山が近いだけあり、溶岩でできた地形は凹凸が多い。途中で何度か降りて自力で歩き、ヤークの体力を消耗しないよう気をつける。
悪いけど、とショートボウで魚や鳥を狩り、火で焼いて食べた。ちゃんとした物を食べないと身体が保たない。

広大な森だから、やっぱり道中同級生には会わなかった。もともとファイアドラゴンは今はいないし、火山に登る物好きは少ないからな。

2日目もただひたすら歩いて歩いて…野営をしたのは火山の裾野近く。
あと何時間か歩けば火山という時、ヤークが脚を怪我したらしく引きずっていたから応急手当をしておいた。
雨が止んでいたのは幸いだけど、外にいると夜露に濡れて体を冷やしてしまう。
歩き回ってヤークが入る穴を見つけ出し、床に干し草を敷き詰めてからヤークを押し込んでおいた。

自分自身は大きな布を木の枝の間に結んで広げ、即席天幕の出来上がり。下の草や石を退かせて地面を平らにならし、火を焚いて横になった。

ヤークには干し草が餌になるし、水も果物もあげた。1日くらいは放置しても大丈夫だろう。
入口は丈夫な蔦で紐を編んで肉食動物が侵入できないようにしてある。

(バーミリオン……明日は会えるよね)

そう思いながら、そっと目を閉じたけど。

《……シア》
「!?」

また、呼ばれた気がして今度は周りを歩き回り確認したけど。人影どころか気配がない。

「なんだろう……誰かから心話…でも、誰が?」

よくわからないまま、いつの間にか寝落ちした。