龍騎士殿下の恋人役〜その甘さ、本当に必要ですか?



臥龍の儀は3日間に渡って行われる。
古代から変わらぬ古の森に入り、自分の力でドラゴンを見つけ出し騎竜となる契約を交わす。
その間森の中で過ごすため、食料や寝床の確保等のサバイバルも自力で行う。基本的に助けはない。
竜騎士となるならば、この程度はこなせなければ厳しいだろう。

「さぁ、出発だ!」

目立ちたがり屋のハワードが一番にヤークで飛び出した。
訓練場から古の森まではヤークで半日の距離。飛竜で戻れば2時間ほどだ。

ただ、ヤークは速いけど長時間の移動は不得手だ。だからペース配分を考えなきゃいけないのに、ハワードは最初から全速力でとばしてる。あれだと1時間も保たないだろう。

「可哀想なヤーク…ハワードに関わったばかりに」

ヤークを走らせながら思わず呟くと、隣のザラードが声を出して笑った。

「あはは…まぁ、ハワードは放っておけばいいよ。なにかあっても自業自得だからさ」

穏やかなザラードだけど、ハワードには散々嫌な思いをしてきたからか辛辣だ。ハワードは誰からも嫌われてる…それこそ自業自得だよね。

ほとんど同じ抑え気味のスピードでヤークを走らせていると、ザラードが遠慮がちに訊いてきた。

「でも、アリシアもよかったの?わざわざバーミリオンと古の森で契約するってさ。そのまま契約しちゃだめだったの?」