龍騎士殿下の恋人役〜その甘さ、本当に必要ですか?




「やぁ、おはようアリシア。よく眠れたかい?」
「おはよう。お陰さまでね。ザラードは…徹夜したでしょ?クマができてる」

養成学校の訓練場に集合した時、ザラードに挨拶されたけど、目の下にクマができて目が腫れぼったい。完全に眠れてないね。

「仕方ないよ…どうも目が冴えて…色々考えちゃってさ。ドラゴンが捕まらなかったらどうしようとか…」

やっぱり心配性なザラードのことだ。案の定今から先々心配し過ぎで緊張感が半端ない。

「ザラード、はいこれ」
「え、なに?」

腰のカバンから布の袋を出して、ザラードに手渡した。訝しげな顔をした彼は、中を確認して指で摘む。茶色い葉っぱを眺めてもなにかわからなかったようだ。

「なに、これ?ほろ苦い匂いがするけど」
「ドラゴンの好物のマルメって果物の葉っぱだよ。果実と同じ薫りがするんだ。乾燥させると匂いが強くなるからね。それを木の枝にくくりつければ、ドラゴンが寄ってくるよ」
「これで、ドラゴンがおびき寄せられるんだ……」

ザラードはしばらく袋を握りしめていたけど……やがて、それを返してきた。

「ありがとう、アリシア。正直な話…便利だし使いたいよ。でも…竜騎士になるなら、他力本願なこんな方法じゃない自分の力でどうにかしたいんだ」

胸のあたりで拳を握りしめたザラードは、固い決意を表すように真面目な顔で告げた。

「ぼくは、父や誰かに言われたからじゃない。自分の意思で竜騎士になりたいんだ!」