パチパチパチパチ、と拍手が沸き起こる。

オーパン・バルのオープニングを飾るデビュタントダンスを踊るデビュタント達が入場したからだ。

あたしも、ヴァイスさんと手を繋いで入場した。

あの後急ぎ城に戻り、ヴァイスさんはメグが用意していた燕尾服に着換えたんだ。
なんでも、おばあさまが“イケメンのために用意しとけ”って言いつけてあったとか。
我がおばあさまながら、さすがの慧眼としか言いようがない。

あたしとヴァイスさんの先にリリアナさんが入場したけど、たぶんクロップス卿が意識を取り戻したことを聴いたんだろう。少しだけ晴れやかな顔をしていてよかったと思う。

ハワードは…やっぱりパートナーがいなかったようだ。デビュタントの中で姿を見なかった。ざまあみろ…とは思う。ちょっとだけね。

デビュタントたちの入場が終わり、勢ぞろいした大ホールの壇上でオーケストラの演奏が始まり、デビュタントダンスが始まった。

「アリシア」
「はい」

ヴァイスさんから贈られた小さなブーケを2人で持ち、2人で足を踏み出す。

ヴァイスさんの巧みなリードでなんの心配もなくステップを刻める。

150組300人が一斉に踊る。当然ぶつかりそうになるけど、ヴァイスさんの見事なフロアークラフトで自然に避けられた。

(このまま……あたしはヴァイスさんと歩いていけるんだ)

彼と、一緒に。
それは、信じられないほど幸せな未来。

踊りきったあと、ヴァイスさんは微笑んでくれた。

「アリシア、見事なダンスでした。これであなたは晴れて貴婦人として認められましたね」
「……はい」

最後に、ヴァイスさんとともにブーケを高々と掲げて2人でお辞儀をする。

割れんばかりの拍手が会場を満たす。

こうして、あたしのデビュタントダンスは無事に終わった。