龍騎士殿下の恋人役〜その甘さ、本当に必要ですか?


「この時期に討伐ですの!?オーパン・パルは半月後ですのよ?」
「そうですわ。アリシアさんのデビューですのに…間に合わないのではないでしょうか?」

マリナさんとカリンさんがそう心配してくれたけど、あたしは首を横に振ってヴァイスさんを見上げた。

「……デビューなんて、いいんです。あたしはヴァイスさんが無事ならば……華やかな場所もドレスも宝石もいりません」

そしてずっと革袋にしまい込んでいたものを取り出し、ヴァイスさんに差し出した。

「アリシア……これは」

彼が手にしたものは、あたしの肖像画が彫刻されたカメオのメダリオン。
リリアナさんとデビュタントのドレスを見ていた時、彼女の提案でついでに作ってもらったものだった。

今は、メダリオンの意味を知っている。異性から贈られたメダリオンを身につけ、さらにメダリオンを送り返せば求婚を承諾したことになる。

あたしはそれの上に手を置いて、頷いた。

「ヴァイスさんがよければ、あたしの代わりに連れていってください」
「アリシア……」

彼はあたしの頭に手を回すと、そのまま引き寄せてこつんと額を合わせる。ドキドキするよりも、なんだか切なく胸が締め付けられた。

「……約束、します。必ず無事にあなたの元へ帰ってくること……そして、あなたのエスコートもすることも」
「……無理、しないで!あたしはただ、無事ならいいの!!」

心配で、心配で。涙がこぼれそうだ。
でも、せっかく見送るなら笑顔でいないと……そう思って、無理にでも笑う。

「アリシアこそ、無理はしないでください」

そう言ったヴァイスさんは、あたしの額に口づけた。