白い漆喰の壁にふかふかの布団が敷かれた大きなクイーンサイズのベッド。伝統ある木材の調度品に暖かな光を放つランプシェード。バルコニーのある窓はすっかりカーテンが引かれてた。
(うわぁーー…本当に、ヴァイスさんと寝なきゃいけないの?)
湯浴みを済ませたあたしは、寝間着のダルマティカを着てる。キルシェちゃんはすでにベッドに横になりスヤスヤ寝息を立てていた。
「アリシア、眠らないのですか?」
ベッドにはヴァイスさんも端に座っていて、笑いながらこちらを見てる。彼も湯浴みをしていて、ナイトガウンを羽織ってる。襟ぐりから見える胸板がとても色っぽい。女のあたしより…。
(うう…このまま逃亡したいけど……ええい、女は度胸だ!)
観念してベッドへ近づき、スリッパを脱いで上がる。
「お、お邪魔します」
思わずそんなことを言うと、ヴァイスさんに吹き出されてしまいましたよ。
「ヴァイスさん!」
「すみません…アリシアは律儀なんですね」
「真面目な顔をしても…目が笑ったままなんですが…」
そんなやり取りをしているうちに、自然と緊張が解けてくる。とはいえ、ヴァイスさんの美麗なお顔を正面から見られる自信はないから、背中合わせになってしまいましたがね。
「キルシェのことは、ちゃんと兄上に伝えましたから」
「……はい」
キルシェちゃんが不在で騒がれないよう、ヴァイスさんはあからじめ兄の王太子殿下に逐一所在地を伝えてる。
ヴァイスさんいわく、“メローネが誘拐だと騒がないため”だそう。さすが、よく幼なじみを理解してらっしゃる。



