「こんこん、こんにちは」
「はい、どうぞ」
「今日は素敵なお茶会ですわよ」

キルシェちゃんが小さなクマのぬいぐるみを持ち、リリアナさんがうさぎのぬいぐるみを。マリナさんがねこのぬいぐるみを。カリンさんがリスのぬいぐるみを持って動かす。
アプリコット城にあったドールハウス(ミニチュアの家具付きの家や屋敷)を、侍女のメグさんに用意してもらい、お人形遊びでお姫様ごっこを楽しんでる。

正直、あたしはこういった遊びは苦手だ。
身体を動かす方がよほど性に合ってる。だから、今はただ見てるだけ。

「は〜い!パイを焼きますよ。キルシェ殿下はなんのパイがお好き?」

リリアナさんのうさぎがキッチンでそう訊けば、キルシェちゃんは「アップルパイ!」と即答したけど。あたしはそれが引っかかる。

(あれ…?メローネさんが得意なのはサーモンパイじゃなかったっけ?)

確か、ヴァイスさんの思い出話ではよく彼女にサーモンパイを焼いてもらっていたと聴いたけど……?
もしかしたら、今はもう焼いてないだけかもしれないし…あたしの邪推かな。

しばらくお人形ごっこが続いてキルシェちゃんはすごく楽しそう。やっぱり幼くても女の子。ドレスとかお人形とかお家に興味あるんだ。

退屈になったあたしはしばらく任せて花を摘みに外に出たあと、戻ってみたら布製のボールを使った遊びが始まってる。マリナさんとカリンさんが相手をしていて、リリアナさんは椅子に座りなぜか硬い表情をしていた。

「アリシアさん、ちょっといいですか?」

リリアナさんに呼ばれたあたしは、彼女に誘われるまま別室に向かう。
そして、彼女からとんでもない話を聴かされた。