龍騎士殿下の恋人役〜その甘さ、本当に必要ですか?


なぜか3人ともラウンジ(応接間)にやって来て、ヴァイスさんとあたしに相対してる。3人がけのソファに向かい合って座り、リリアナさんがヴァイスさんを追及した。

「ダンスはわかりましたが、お支度はどうするんですの?ドレスはわたくしが見繕いましたが、他にも色々必要なものはございますのよ?」
「それもきちんと考えていますよ」

にっこり笑ったヴァイスさんは、令嬢方に向かいきっちり確約する。

「アリシアはちゃんと来月のオーパン・バルで社交界デビューさせます。私の恋人として正式に紹介したいので」
「……!!」

(ヴァイスさんがあたしのデビューを言い切った…!?なぜ??あたしは偽の恋人のはずなのに)

あたしがヴァイスさんの恋人だと広く知られてしまえば、都合が悪い事ばかりしか起こらない。本来来るはずの縁談が来なくなってしまったら…。

「ヴァイスさん…!」

思わず小声で彼を咎める声を出せば、いきなりソファに置いた左手を握りしめられた。

(うっ…)

指と指の間を握られる…いわゆる恋人繋ぎをされて、ギシッと身体が固まってしまう。しかも、指先で手の甲を撫でられたり…くすぐったいし…恥ずかしい。


「私は私なりにアリシアとの将来をきちんと考えている。オーパン・バルでは両親にアリシアを紹介するつもりだよ」

ヴァイスさんがそう言うと、わぁ!とふたたび歓声が上がる。

「アリシアを心配してくれてありがとう。アリシアは本当に素晴らしい友達を得たようだね。これからもよろしく頼むよ」

なにか言いたいのに、ヴァイスさんの指があたしの手に悪戯してばかりで集中できず、結局なにも言えなかった。